◎1月21日〜22日

1月21日
手こずりました石の回廊。砂丘の様子もきっちりレポート。

第15エタップ 606km(ダッカラ〜ダッカラ/SS352km、リエゾン254km)
 ダカールラリーの一行はダッカラのオアシスで2泊となる。オアシスの回りは古い村と美しい景色だ。山のように連なった台地がオアシスを分断し、年間にわずかずつ移動を続ける砂の山。ダッカラは時の流れが止まっているような場所だ。リエゾンを終了しSSスタート地点に選手は集合して、西エジプトの特大砂丘を走る。砂丘群を横切り、岩塊を走る。後半は、白亜の谷に沿って、再びダッカラに戻るルート。しかし、この日のハイライトはゴール手前20km地点の砂に覆われている丘の下りだ。ここはいったん下ると逆に登ることは不可能である。

ラリー16日目、第15エタップは走行距離が比較的短かったためか、現地時間1月21日夕方5時30分(日本時間1/22朝2時30分)に第1報が入ってきました。そしてその4時間後には第2報が。今回もレポートは第1弾、第2弾に分けてご紹介します。

 ジャーン、帰ってきたよ。何とか。キャンプ地に着いたのが夕陽と同時くらいで、お昼には帰れるなんて言ってたんだけど、3時間くらい遅くなったね。

「石の回廊」を走りました。

 結構大変な道でね、前半は大きな砂丘のうねりの中での走りだったので楽だったんですけど、後半はファラオラリーによく使われていた「石の回廊」と呼ばれる砂丘から大地溝帯につながる地形を走りました(スーダンから続いている地球の割れ目と呼ばれるアフリカ東部地溝帯です)。
 白くて、デカくて、ささくれだった石の間にある砂の道で、砂と岩がごろごろしているところ。クニャクニャ曲がっていて全然スピードがのらないところなのね。すごい難しいの!というところが最後に出てきて、そこで2回くらい倒れました。
 そんな風だったので(到着が)少し遅くなりました。でも面白かったよー。
 明日のスタートも早いので、今こんな時間に電話しちゃった。まだ順位とか見てないんで、またその後で電話します。

ちょうどいいところ(?)でコケました。

 ダサーイ転び方をしまして。「砂に刺さった」というのでしょうか、砂丘の下りのところで、フォトグラファーのミシェル・マインドル(99年のパリ・ダカールへ私と一緒に取材に行った)と日本人カメラマン山田秀靖くんがいて、オー、いるぞいるぞ!と思って、カッコよく下ろー!と思ったら、そこで「カッコよく』コケました(笑)。へへへ(笑)。TVカメラも回ったりして。
 で、私は今までに何度も止まって砂を拾おうと思いつつ、まだ拾えてないでしょ。今日は秀靖くんに会ったら「砂拾っといてね。一番キレイなところで」と言おうと思っていたのですよ。そうしたらちょうど秀靖くんの前で転んだので「拾っといてねェー」と言うことができました(笑)。

うねりの中はキケン。でも草の丘もあったりして。

 倒れたところで水を飲んで、また砂漠のうねりに飛び込んでいきました。うねりの中ではね、風紋ができて吹き溜まりになっているところは洗濯板状になっていて危険なのね。そこで今日はヘリで運ばれた人もいたくらいですね。
 私もそんな状況のところで2度ほどコケてるし、最初に出場したファラオラリーでも30mくらい飛ばされたのがそういうところだったし、とにかく危ないんっですよ、そういうところが。
 と思うと、キレイな丘の上に草が生えてて、草原の丘(笑)ってのが延々と続いてたりするのね。遠くには砂丘の影ができて、ものすごいうねった砂丘が左右に見えていて、それはそれは気持ちのいい風景だったりするのね。

体は疲れ気味。トシかな?

 体には疲れが溜まっているようです。今までのレポートだと、私はゆっくり走っているように感じられるでしょうが(笑)、止まっている以外は実はちゃんと走っているのですよね。走っている時にガレ場では体が言うことをきかない!ヨレヨレになるくらい体が疲れてたねェ…。
 石の回廊が、前の時よりも深く、長く感じられるのは(12年前に通った時と比べて)やっぱりトシのせいでしょうか(笑)へへ。
 池町くんは、また他のところは全開走行という状況で、ここ(石の回廊)でしか抜けないのでバリバリと抜いていった、と言うんで「ヒェーッ!」と驚きました。そんなに驚くほど難しいところなのですよ。

(まだまだレポートは続きます。)


第2弾です。

今日も人助けをしました。

 一緒にたき火を囲んでいた時に、ミカン3つで面白い芸をしてくれたライダー(名前は知らないんだけど、とても感じのイイ人)が、大草原の海原(笑)で止まってたのね。どうしたの?って聞いたら、「チェーンが切れちゃった」と。今日はチェーンを切ってる人がずいぶんといたね。私を助けてくれたスペイン人ライダーも2度切れたって言ってたし…。途中止まってた人もみんなチェーンが切れる!って。だからバイクの方も限界なんだよね。4〜5日(競技が)なくなったとは言え、みんな修理に念が入ってるはずだよね。
 で、大草原のミカン芸ライダー(笑)には、マーちゃん(雅康氏)に「お守りだよ!ウチのチェーンは切れないけどね。」と言われて持っていたチェーンのコマがあるんだけど、そのひとコマをあげました。彼は帰ってくるでしょうか。多分1〜2時間すれば帰ってくるんじゃないかとは思うのですが…。

色とりどりのフェシフェシを走りました。

 エジプトに入って、このダッカラのオアシス周辺は緑が一面に広がってるの。砂漠とともに。大〜きなナツメヤシの木が街の中にドーンとあったり、何〜にもない砂漠でも鳥が飛んでいたり、タヌキみたいな死骸を見つけたり、ネコみたいなのもいたり、とにかく動物がたくさんいてね。朝方、夕方には飽きないよ(笑)。
 あとね、今日はフェシフェシ(粒子の細かな堆積層)を走りました。フェシフェシの色は緑とか紫とかピンクとか黄色とか、いろーんな色。中でも一番キレイだったのは緑。グリーンだったね。そんな夢のような景色の中を走ったのです。

※フェシフェシについて
 フェシフェシとは、多分アラビア語で砂漠の中に時として現れるある種の地質状況を指します。具体的には、堆積層(第三紀、ジュラ紀、白亜紀などの古代層)が海底の隆起によって現れたもの。植物、鉱物などが化石化、風化して、非常に細かくなった粉末状の地質のことをいいます。ラリーにおいては、これが大気中に漂うと比重が軽いため、ホコリ状になっておさまらず、路面としては底なし沼のように柔らかいため、非常に走りにくいと言えます。運動会等で線引きする石灰の層が1m〜2mの深さで堆積していると考えると分かりやすいでしょう。(解説/山村雅康)

お世話になっている人たちは。

 スズキの尾上さんたちが今日4駆が2駆になってしまったとの事。SSに入らずに直しているんじゃないかと思うんですが…。以前、私が車でそうなった時に、尾上さんに引っ張ってもらってSSのスタートに行き、エンジンをかけてもらうなど助けてもらった事があったのね。だから非常に心配してます。
 幸繁くんは、風邪が随分良くなったので、ホッとしてます。エライんだよ、(そんな状況なのに)やることはちゃんとやってくれていて。
(毎日のお祈りのおかげですね)
 ね、ホントそうよ…そう思います。
 今日、石の回廊で倒れた時、エンジンがかかりそうにないなあ、と思っていたら、1台車が止まってくれて(他の車はバンバン走っているんだけど)、エンジンかけてくれたんだけど、なかなかかかんないのよ。その人も「アリャリャー」ってなカンジだったね(笑)。その人面白くて、(ナビなしで)1人で出てるの。後続車は来るのにね、どうだろう、10分くらいそこにいて、かけてくれて。で、かかった時、私はもーウレシクてさ。だってバイクの人は誰もいない状況だったし、早く帰らねば暗くなっちゃうし、ね。「ありがとう!」ってその人に言った時に思わず涙がポワ〜ンと出てきてしまったのでした。あまりにうれしくて。やっぱり心細かったのかしら、と思いながら。車の人にそんな風にお世話になりながら、ゴールできたのでホッとしました。
 ガソリンを分けてもらった177番の人も、実はあまりうまくなくて(笑)私と同じような腕で、その人も同じ時にゴールして、「お互い生きててよかったね(笑)」というカンジで。それもホッとしたことですね。

チームメイトは…。

 斉藤くんはもっと早く帰ってきたみたいなんだけど、やっぱり石の回廊では「コケまくりました」と言っておりました。そこを池町くんは笑いながら飛ばしてた(笑)というのは、スゴイなあと改めて思いましたねェ…。
 リタイア車が多くはなったんだけど、このままみんなカイロには一緒に行けるんじゃないかと思います…。ここまで来たら後2日だからね。カイロまで、ピラミッドまでってみんな同じ思いですね。
 谷口さんを心配してくれたフランス人(83番の人)は、今日足首の骨を折ってリタイアしました。さっきまで分からなかったんだけどね。見たらギブスを巻いていたのでした。やはり私が2度も転んだというアンジュレーション(うねりの中の砂が波々になったところ)でひっくり返って、自分のバイクが足に降ってきたんだって。それで折れちゃって。谷口さんとシャンピオンくんと並んでると三人トリオで足が悪い!というカンジでスゴイものがあるんだけど(笑)。

谷口さんリタイアの理由。

 その日、朝から足の調子も良くなくって、走り始めてなんと30kmのところで後ろのタンクがガス欠になったんだって。ギョギョッとしたんだけど、多分どこかから漏れてたんじゃないかと(漏れた跡がないから不思議)。
 ガス欠の中、何度も他のライダーに分けてもらい、また止まって、また分けてもらい、それを繰り返していたら時間は経っていき、昼間何てことない道も、夜で地獄のような状況だから、何度か転倒もしたらしいのよ。で、その後ろにたまたまオフィシャルのメディカルの車がいて、彼の足をテーピングしてくれたドクターがそこに乗っかって見ていた、と。で、これ以上は危ないし、無理だと。足の状態もヒドイと。そういうことで(いろんなことも重なって)ドクターストップ。自分でも納得して、やめたそうです。そういうわけでした。
 カイロから、日本へ早く帰って治療を受けるそうです。足はスゴク痛そう。足を掻いてるから、あー風呂入ってないから痒いのかな、と思ったら、「痛みで掻かずにいられないんだ」って。でも顔は笑ってるんですよ(笑)。顔はとても爽やかな笑顔で(最初会った時からもちろん爽やかな人なんだけど)。

助けられて思うコト。

 昨日のSSの何でもないところでコケた時、通りかかったバイクの人が大丈夫?って言うんで「ウーッ」とかいう顔をしたら、タタタッと来て一緒に起こしてくれて、エンジンかけてくれて。その時にさ、男の人って何て力があるんだろうって、改めて思ったのね。弱々しいと言いつつ177番の人だって力はあるんだよね。体もデカイし、バイクもヒョイっと起こしちゃうし、またぎながらデケデケ走れるし、うらやましいな、と。
 その人も砂の深いところでグイッグイッとバイクを押して、後ろを持ち上げて、向きをパンパーンと変えてさ。ヒェー!私なんて絶対そんな事できないワってカンジなのに、そういうのができちゃうのね。いいなぁーと。その人はKTMの40番だったんだけど「どうもありがとう」ってお礼を言って。その後、リエゾンの時に「どーもー」なんて言っただけで、ちゃんと挨拶しなきゃな、と考えてたの。今日の朝その人は私の10番くらい手前にいたの(ホントは速い人なんだけど、理由があって遅れてたんだろうね)。でもスタート直前だったから、今話しかけちゃ悪いので、帰ってからにしようと思ってそのままにしたんだけど…。
 スタートしたすぐ後に例のアンジュレーションへヘリコプターが来てたのよ。一番スゴイところだったから、多分タテに飛んで病院送り、という状況だったと思うのね。運ばれた人のバイクが「KTM」ってのは分かったんだけど、番号は見えなかったの。で、後でシャンピオンくんに聞いたら「40番だ」って言うのよ。
 「ヒェーッ!私を助けてくれた人がリタイアしちゃったんだー…」悲喜こもごもというか、人生いろいろありますよねェ…。助けてくれた人がどんどんリタイアしちゃうのがホント悲しいです。現在バイクは108名残ってます。だから半分になっちゃったね。200人いたんだもんね。

走り方について思うコト。

 今日みたいな砂丘は、跡が付くんでみんなが走ったラインがよく見えるのね。安全なところによけたり、右へ行ったり左へ行ったり、幅の広いところだと1kmくらいの幅で走るわけ。それがまた一筋に近いくらい集結して、ってカンジね。で、ラインの取り方一つとっても、性格が出てて面白いね。
 これは誰かの後を付いて走るとよく分かるんだけど、絶対ラインの一番端っこにいる人とか、真ん中にいる人とか、斜めに右行ったり左行ったり横断する人とかいろんな人がいてね。自分はどこかな、と思うと、一番端っこは恐いから、その何本か内側の誰も踏んでないところを行くと楽かな…と。乗り方もそうだし、ラインの取り方もホント千差万別なのが毎回すごく面白くてね。ラリーは人生だ!というけど(笑)、それがラインに表れているような気がします。調子のいいとか悪いとかもラインに出たり、危ないところはみんなビクビクしてるように見えるし。気持ちいい所はもうみんなバァーン!ってなカンジ(のライン)だし。面白いね。

痩せません。

 今までのラリーと全く違うのは、「痩せない」のですよ。まあ休息日が長かったこともあるんだけど、ラリー前半の頃は食べても痩せていたのだけど、後半、寒くなってからは前より食べてるのかもしれませんが、太ってきた(笑)みたい。体調が良いってことでしょうね、これはね。内臓的にはすごく丈夫です。ラリーの前と体重が変わってないんじゃないかな。こんなことは今までになかったゾ。チュニジアラリーは短かったから太ったんだけど、パリ・ダカールは普通7〜10kgも痩せるのになぁ…おかしいなぁ…と。全然痩せませーん(笑)。今なんかも食欲いっぱいで、ケーキを4つくらい食べちゃって。前にも言ったように、またお盆の大きさが半端じゃないくらいデカいのよ。直径60cmくらいの丸いお盆。頭のてっぺんから腰くらいまで(笑)あるような。そんなお盆にいっぱいのっけて食べるんだけど、死ぬほど(笑)食べちゃって…。起きると目がムクれてるくらい(笑)。

ああ、ラリーは楽し。

 すごくツライんだけど、走ってると周りがホントにきれいで楽しいのね。自分をバーンと抜いてく人の姿を見ても、うーんいいいなぁ、絵になるなぁ、なんてね。みんなそれぞれ生活があって、何か夢を求めてやってきていて、こんなに同じ素敵な景色を共有して。4輪も2輪もまだこんなにたくさん人がいるのに、みんな会うと必ず挨拶をして…。すごくいいカンジよ。
 「ラリー」というのは「再び集う」という意味があるんだけど、本当に前会った人も今回会った人も、また出会えるんだろうなぁ…と思いながらね。

緑がまぶしい。暮らしのテンポがいい。

 ここダッカラのオアシスは、緑が光り輝いちゃってホントにキレイなのよ。畑に美味しそうな野菜がびっしりと栽培されてて。丈は5〜60cmくらいなんだけどね。1頭のロバの後ろの荷台に山盛りの野菜を積んで、みんな家路に急ぐというシーンが見られるの。それがいいなぁ、とか美味しそうだなぁ、とか思って見てます。
 馬とかロバとか車とか歩きとか自転車とか、それぞれが全て、ちゃんと生活の中に生かされている、機能してるってのがいいね。車は車でちゃんと使うけどさ、歩きは歩きでトコトコトコと何km歩いて行くんだろうってカンジの、そのテンポがいいね。

光の存在感。

 毎日こんなにいろんなものがキレイなのは、何なんだろうと思うと、やっぱ光だね、光。これはアフリカだけじゃなくて、日本でもキレイだなーと思う時、何でかというとやはり太陽の光だね。光があるからいろんなものが輝きを持ってくるのね。
 砂漠にある石だって、ただピンクというよりサーモンピンク、ローズピンクに石が光ってるのよ。砂丘も光るのよね。1個1個の砂が光ってるんだよね。今回は、光があることのすごさ、というのを改めて感じた。何て美しいんだろうって。その中を鳥が自由に飛び回り、人々が生き生きと暮らし…(政治的にはエジプトもリビアもニジェールもセネガルも大変なんだけど)。フツーの人々のフツーの暮らしがあるところだから、その豊かさを「いいなぁー」と、光の中で感じましたヨ。

エジプトの原色ファッション。

 エジプトの子供の服がきれいで面白いね。原色なの。赤とか緑とか青とか、中間色がなくって。きれいですね。大人の人もね、紫で統一してたりとかね。オシャレで。ヨーロッパの人がその中に入っても、むしろ地元のそういう人の方がオシャレに見えちゃうのよね。で、そういう原色を使うってのがまたリビアとも違うのよ。リビアはもっと暗い色を使ってるのね。それはそれですごく似合ってるけど。不思議だねーホント。

成績のこと。

 私の今日の成績はSS96位、総合で89位。また上がってしまいました(笑)。
 女性ライダーですが、アンドレア・メイヤー(BMW)は、昨日夜中に帰ってきました。あんな速い人が夜中に走ってたなんて大変だったろうな。で、とうとうポルトガルのジャチント(KTM)がトップになりました。逆転。

やっぱ同じコト思ってる人がいた!

 前に助けてあげたクワドに乗ってる人とよく話をするんだけど、昨日の夕焼けはすごくキレイだったねーって。その人は実は私よりも遅くて、ものすごい時間かけて走ってくるのね。で、夕焼けがキレイな話で盛り上がって、あ、私と同じこと考える人がいるんだーって思って、ウレシクなりました。
 横に見える山だけど(昨日はそう表現しなかったけど)、スターウォーズのセットみたいなの(笑)。ホントにそのまんま。チュニジアは何かそのままセットに使われたって聞いたけど、ホントそういう感じ。もうセット、セット。どこの場所でもセットになるよね(笑)。違う星のカンジがすごーい面白い(笑)。

夜走るとはどういうことか。

 夜は前の車のライトがチラホラと見えるのね。でもそれが星のあるような位置にバックライトが見えたり、逆にすごーく下の方に見えたり。周りは暗いし、今走ってる角度がよく分からないんで、そういうことになるのね。で、これは昼間もそういうところはあって、砂の中に、遠ーくにバイクが小さく見えているんだけど、あ、あそこにもいた!って思うとそれは近くの10cmくらいの石だったりするわけ。一面砂だから。そう見えちゃうのね(笑)。錯覚がすごいの。面白いけど難しいよね、同じように走ってる時、危ないものを見つけるのに錯覚しちゃうことがあって、より早くより早くって危ないものを見つけてかないといけないんだけどね。とにかく「読み」ですよね、「読み」が大事。

今度のラリーは考える時間があるのです。

 速い人はブンブン飛ばすでしょ。でも途中(リタイアで)いなくなっちゃったりする人もいて。それでよく考えるんだけど、「ほどほど」というのか、人生で走りすぎると、必ず「休めよ」っていうのがあるじゃない。それがどんな速い人にも遅い人にもあって、丁度いいところで体を休めたり、気持ちを休めたりしないと、ダメよって。そう思ったりするの。ラリーって長いからさ、なーんてね。
 そんな風に、今回のラリーは全開走行が多くて、いろいろそんなことを考えたりすることができるのですよ。あ、これ日記ネタにしよう(笑)、なんて思いながら。別に集中してないわけじゃなくて、考えられる時間がある、という事です。で、全くそんなこと考えられない「石の回廊」みたいなところもあるわけですよ。

 今日は嬉し涙あり、心の余裕あり、一人で走りながら「ウー!私ってガンバってるなー」って自分で思う、そんな1日なのでした。転んでも悲壮感もないし。人を助け、助けられ、といったことを含め、とっても面白い今までに全くないパターンのラリーだな、と。そう思うのでありました。
 あ、尾上さんの車、4駆に直りました。現在、プライベーターとしては三菱の友川さんがトップになりました。トヨタの金森さんたちは、カイロまで行くそうです。
 そんなカンジでーす。とにかくあと1日です。ガンバリます。それじゃ、また。

●今日の成績
 SS/96位
 総合/89位


1月22日
ゴール直前で大転倒。メディカルからのレポートは…。

第16エタップ 722km(ダッカラ〜ワディ・ラヤン/SS416km、リエゾン306km)
 カイロ手前の実質的な最終エタップである。最初の数キロは砂丘を越え、曲がったピストを走るが、速度は出せるもの。そしてワディ・ラヤン湖手前のオアシスまでは少しのオフピスト区間がある。キャンプ地には昼過ぎには到着できるだろう。このワディ・ラヤンのキャンプ地は今回のラリーの中で最も美しい場所だ。VSOのラリー観戦ツアーの人々がゴールで出迎え、そしてキャンプの夜を共に過ごす。

ラリー最終日前日、第16エタップのレポートは、私がまだかまだかと心配になった頃、現地時間1月22日夜11時30分(日本時間1/23朝8時30分)に、ようやく入ってきました。声を聞いて安心したものの、いつもより少し声のトーンが落ちているカンジ。聞けば、メディカルで治療し、今日はここでそのまま寝るとのこと。一体何が起きたのか??

 ハーイ、帰ってきました。帰ってきたとは言うものの、最後に「大転倒」したのヨ。私の記憶では、多分ゴール3km手前くらいで…エヘヘ。でも大丈夫。明日も走れます。
 でも今は、メディカルでみんなにお世話になってます。大丈夫です。でもメディカルです(笑)。

ミスコース。でも楽しめました。

 今日は結構大変な日だったの。400kmちょっとなのに、バイクにとってはキツイコースだったのね。岩がガラガラあったり、洗濯板状の砂があったり、フェシフェシがあったり、ホコリだらけだったりetc…もー大変だったんですよ。
 前半は、スタートしてすぐに例のクワドが止まってたの。チェンジペダルが根本からポッキリ折れてて、それを何とか手に入るように一緒にあれこれしてあげて、手に入って。最後の日にリタイアしなくてよかったネ…と、ホッとしながら走っていたら、CPに近づいていたんだけど、路面を追ってしまって、超ミスコースをしてしまいました。岩場のところで何と15kmもオーバー。多分3〜40分はロスしたね。
 その辺はグランドキャニオンみたいなところで、岩と砂の饗宴状態。でも走りやすくて、楽しくて、面白い、というところだったのね。高いところへ出たり、低いところを走ったりしながら、遠くに車の砂ケムリとヘリコプターを見つけて、「あれだァ!」と言いながら、カップ走行(コンパスの指示に従った走行)して戻ってきました。

大転倒の経緯。

 そんなこと(ロス)があったので、じゃ、ちょっと飛ばして…と思ってものも考えられないくらい路面を追ったんですヨ。グァ〜ッと一生懸命走ってたんだけど、ふともう体がボロボロだということに気づきました(笑)。
 調子よく走れる路面もあったり、砂丘の途中でアクセル戻しすぎてエンジンが止まったり、とそれなりに走りつつ、体に相当きてるなーと感じていました。で、後半、今日のゴールまであと10km、8km、6kmなんて言いながら走っていたのよ。ところが暗くなってきちゃってね。非常に微妙なところなんだけど、あと5kmくらいのところでゴーグルのレンズをクリアに替えずにスモークのまま走ったのがいけなかったんだよね。ヘッドライトも直してもらって明るいのに、ゴールに向かって気持ちが焦っていたんだね。
 で、4輪の人たちも、暗くなってゴール地点を見つけるのが難しくって、右往左往してたの。ゴールの灯りは見えてるんだけど、そこへのアプローチが難しくて…。でも私は、地図の通りで行くとここだな…と。みんなが通った跡も見つけて(確信を持って)「ここだ!お先にーっ!」なんてカンジでウァーッと走り始めたんだけど……その後、記憶がございません(笑)。
 あと3kmくらいで。記憶ソーシツになりましたね。きっとワダチで飛んだんだね。ハッと気が付いたら、私はバイクの下敷きになっていました。
 バイク熱イ。バイク重イ。アタシ動ケナイ(笑)。
という状況で、すごくおかしかったヨ。
 斉藤さんの記憶ソーシツとか谷口さんのケガとかいろいろミックスしたような出来事だよね(笑)。とにかくまず重かったのよ。何でバイクが私の上にあるんだ!って(理由が)分からないわけ(笑)。ラリーだ、ってことも分からないわけ(笑)。重い!重い!ってジタバタしてもビクともしなくて、イタイよー重いよーとか言いながら、ふと、誰も助けに来ないかもしれない?と気づくわけ。人があまり通らない道だし、夜だし、みんな右往左往してるし…。誰にも見つけられずに私はこのまま死ぬのだワ(笑)と一瞬そう思ったね、ホント。「それにしても重すぎる」とか思いながらも…(笑)。
 「ウー!助けてクレイ!」とか言うんだけど、誰にも声は聞こえないだろーなーと考えつつ、そこから私は気を失ったのでした。

ゴール後はメディカルへ直行!

 ふっと気が付くと、プレスが通りかかってバイクを起こしてくれた、と。ちょうどその時シャンピオンくんが後ろから「レイコ、ドーシタノ?」って来てくれて。暗闇の中で、何人かのプレスカーの人とシャンピオンくんが一生懸命エンジンをかけてくれてました。ヘッドライトを直してくれた、エアメカで違うチームのピレさんもなぜかそこにいたのよねェ…。で、エンジンがかかって。
 ちゃんと次の日のマップをもらって、無事ゴールのチェックを受けました。
 で、メディカルへ直行!そのままずっとここ(メディカル)を動いてないんだけど…。着いた途端に縫われました(笑)。ウェア(パンツ)を脱いだら血だらけで。太ももの内側なんだけど、チクチクチクと数針、麻酔もせずに縫われました!「ギョーッ!」というカンジでした!(笑)
 それも痛かったんだけど、左大腿骨を、多分バイクで打ったんだよね。折れてもいないし、ヒビも入ってないけど。マンジュウのようにボワ〜ンと腫れております。ちょっと動かせないんだけど、明日は短いリエゾンと10kmのSSだから、バイクにさえ乗れれば、OKでしょう!ホント、最後の最後でねー…。
 今日は朝から海の底のような、タコツボをひっくり返したような(笑)グランドキャニオン状態の中を走ったんだけど、またこれがホントにキレイな景色なわけ。すごいキレイ。ミスコースも実はすごく楽しかった(恐くもあったけどネ)。なーんだか最後の日は、(走りが難しかったってこともあるけど)面白い1日だったなーと思ってたら、その最後の最後に「今までこんな経験したことないゾ」ってのがきちゃいましたねぇ…。
 でも、走れないわけじゃないから、良かったナ、と思ってます。おかげさまで。

バイクが私に乗っかりたかったのでしょう。

 谷口さんがすぐ来てくれて、横にいてくれて、シュラフ持ってきてくれたり(寒くてブルブル震えちゃって。夕方だしね)してね。お昼過ぎに帰れるなんてトンデモない話で、夕方になってしまいました。
 袖のところをエンジンでヤケドしてたのよ。バイクはフロント周りが少し曲がった程度で済んでるから走れますね。
 幸繁くんも秀靖くんも、マインドルもみんないてくれて、みんなみんな、肩揉んでくれたり、荷物の整理を手伝ってくれたり(今日、ここで荷物の整理をしなきゃいけなくなってるのね)、ホント、お世話になってしまっているのでした。
 でもね、私初めて「そばに誰かいて下さーい!」「誰もいなくならないで!」って言ったね、さっき。今までも骨折したこともあるけれど、大転倒して、ここまでダメージを受けるなんて(ファラオラリーでもひっくり返ってってのはあるけれど)ねェ…。ホント今までで一番辛かったね、今回のは。…動けないし。バイクの下敷きって、あんなんなのね(笑)。大変なのね。抜け出せないのね。
 でも、最後にバイクも私の上に乗っかりたかったんじゃないのかなぁ、きっと(笑)。「ヨイショ」ってカンジで(笑)。大きな犬がさぁ、のしかかってきたってカンジでね。とにかく、滅多にできない経験でございました。命にも別状ないしね。足だけだったし。肩は痛いけど肩こりだったし。あとは全然大丈夫です。

メディカルでシュラフにくるまって思うコト。

 メディカルでシュラフにくるまって電話してます。この周りでみんな一緒に寝てくれててウレシイなというカンジです。トヨタの金森さんたちのメカが防寒対策で(グリップのところに)段ボールを巻いてくれて、それがすごく暖かかったです。いろんな人に暖かくお世話になってます…。三菱の増岡さんにはまたウェアを渡してしまいました。でもまた会えなくなるのが恐い(笑)です…。ホントに一人ではワタクシ生きていけませんなァ…(つくづく)。
 あ、昨日ヘリで運ばれたと思っていた(私を助けてくれた)KTMの40番の人は、生きてましたね。復活したのか、違う人だったのか、今日はいました。良かった良かった。
 あと、今日の一連の出来事を振り返り、谷口さんがリタイアした時「いろいろあってね」という一言が、今になって私はよーく分かりました。私もそんなカンジだったのよね。いろいろあって、こうなったのね(笑)という、なんて便利なコトバ(笑)というか、それが一番状況をよく表している、というのがおかしかったですね。

 …という、今日はケガしてていつもより短めのレポートですが、最後に。
 決して自分は一人では走ってないな、と。「一人で走るんだーい」と言っていたけど、こんなにお世話になってて、一人で走ってるとは言えないな、と感じています。いろんな全てのことを含めて、多くの人のお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。良かったです。感激してます。ありがとうございます。
 でも、あと3kmでコケるのも私らしいかな。すごく楽しませていただいて、とってもいいラリーです。
 また明日、ゴールしたらレポートします。それでは…。

●今日の成績
 SS/89位
 総合/88位

次の日記へ(1月23日〜2月28日)



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