◎1月20日

1月20日
砂にも多彩な色がある。風景に圧倒されながら走ってます。

第14エタップ 852km(コフラ〜ダッカラ/SS789km、リエゾン63km)
 エジプト入国。とても変化に富んだエタップだ。ここでは、アフリカ大陸で現れる殆どの状況に遭遇することができる。ナビゲーション、オフピスト、峡谷、砂丘、砂丘群越えなどがそれらだが、砂については過去のダカールラリーでは現れたことのないようなものだ。このエタップは今年のダカールラリーにおいて最高で最長のものである。スタートして国境までの160kmは、とても速いルート。エジプト側は偉大な砂の海である。このエタップの試走時、高さ50mの丘を越えるルートを探すことと、その後ろに迫る砂の海のため、ここで3日間を費やした。非常に柔らかい砂丘は、高さ約100mもある。砂丘と砂丘の間はまるで谷のようだ。選手はロードブックに書かれた注意事項を忠実に守りながら、正確に堅い路面を走行し、谷から次に示されるバリーズ(道標)に向かうように。SSの最後、ダッカラまでは、砂の台地をハイスピードで越えて至る。※T−5は別ルート。

ラリー15日目、第14エタップのレポートは、現地時間1月20日夜10時(日本時間1/21朝7時)に入ってきました。今日はエジプトへ入国。前日は長いSSといくつものデューン越えを心配していましたが、問題なくクリア。リビアとはまた違った砂の風景や色も報告してくれています。

 行ってきました〜。着きましたよ。
 朝6時半にスタートして、夕方6時に帰ってきました。長かったぁ〜っ。長かったから、帰ってドッと疲れが出てますね。特に、ガソリンをザックに背負っていたので、ドッシリと肩にきてますね。
 さて、今日は先に成績から報告しておきましょう。SSで99位。総合成績は何と91位まで上がりました(笑)。(ルート上は)エンジンが壊れた!とかいう人達が多かったからね。
 斉藤くんもSS71位で、総合は97位まで上がってますよ。ガンバってますよ。おっと、池町くんは何位だったかな?見てこないと…。

砂丘では3回コケただけ。

 今日も全開が多くて、砂丘もありましたねー。その中に風紋が育ったような、デコデコッとしたところがあって。スキーのモーグルの「コブ」が育ってるようなやつなんだけど、そんなにスゴイ規模じゃなかったんで、そのままダァーッと行ったら、ズデデデデッとコケて(この前も同じようなところでコケたな、とか思いながら…学習していない私です…)。そこで、カウリングがグシャッといきました。でも手でクイッと直して。そしたらちょうどチームメイトのシャンピオンくんが通ったので(笑)、一緒に起こしてもらって…。今日のダメージはそのくらいかな。ひとコケ(笑)。
 砂丘はすごくきれいで、そんなに難しいことはなかったんだけど、一度アプローチを間違えて、ちょっとはまって。プレスカーが通ったので、その人に押してもらって、脱出しました。あと何でもないところで立ちゴケ(笑)ってやつを1回。今日はこの3つですね、コケたのは。

人を助け、人に助けられ、月にも助けられ…。

 人助けもしていたのでした。砂丘でたまたま横を走っていた人が埋まって、その人を助けたりなどしていました。そしたら夜になってしまいました。
 夜になって気が付いたのですが、何と転倒のショックで交換した明るいライトがつかなくなっちゃったのね。予備でつけてた3つ目のライトだけで来たんだけど、何〜にも見えなくて。最後の100kmくらいは時速5〜60kmでユルユルと走ってたの。たまに通りがかる車にくっついていこうと思うんだけど、直線になると向こうが全然速いんで、置いて行かれて。そのうちに最近よく会う、ゆっくりコンスタントに走ってる人が後ろから来てくれて、その人の横に並んで走らせてもらい…帰ってきました。だからまあまあ早く帰って来れたんだけどね。日々、助けられるのですよ。ハー。
 月にも助けられてね。何と、日が沈む頃、ちょうどその反対側から、もうじき満月という月が白くボーッと出てきてくれて、ヤッターッてカンジで。大きな月が上がってくれて、周りは何となくウスラボンヤリ(と見える)なのよ。それもラッキーでした。

砂の色と風景に圧倒される。

 エジプトの砂丘もきれいでしたねェ。で、砂の色なんだけど、本当いろ〜んな色(の砂)が出てきたのよ。砂そのものは普通なんだけど、ピンク色!といってもケバくないピンク。それに紫色!赤に近いような紫とか、うす紫色みたいなのとか青っぽいのとか。とにかく多彩な色の砂が出現。それがまた、なんだコリャ!ってなカンジのオドロキの色なのよ。夕陽になりかかったらなおさらのこと、キレイになっていきました。
 夕陽はキレイだったよォー。夕陽を浴びて走っていくと、反対からお月さんが出てきて。背中に夕陽、目指すはお月さん(笑)。月もまた絵に描いたようなうすい月なのね。飛行機でよく見られるような、夕焼けが地平線に続いていて、青紫色にね。上の空は青くて…。とにかく、参っちゃう美しさですね。夕陽にあたった私の影が、地平線の方まで何10mものびて、ね…。

ここは違う星?

 それまでに見た風景もスゴくてね。陽炎なのよね、全部。砂丘の周りは遠くに低い山が続いていて…。グランドキャニオンみたいなのをペシャッてつぶしたような(笑)山が延々と横にあって、いろんな表情を持ってたりするんだけどね。で、それがぜーんぶ下の部分が屈曲してるのです。浮かんでいるように。ボーッと。それが陽炎なのね。
 で、ここはホントに地球なのかしら?と思うのね。どこか違う星なのかしらと思うくらい、何とも言えない素敵な景色ですね。
 砂丘は競技で走ると思うと恐怖感があるんだけど、でも何てキレイなんだろう、何てやさしい表情をしてるんだろう、なんて思いましたよ。砂のうねりが曲線だから、すごくやさしく感じられたのね、今日は…。
 埋まると苦しいんだけどサ(笑)。それ自体はホント美しくてね。
 山にも表情があるって言ったけど、一つ一つの山が面白いのですよ。富士山の上にポコッと丸いのをのっけたような山とかね。何であれだけ上が丸いのかしら(笑)とか。よくグランドキャニオンにあるじゃない、クビの部分が細くなってるような山。あんなのがいっぱいあったりね。日本に1個だけ持ってきたら、きっと名物に(笑)、観光地になりそうな山なのに、誰も見る人はいなくて、でも延々とそういうのがあるというのが面白いですね。とにかく景色のすばらしさは、鳥肌が立ちました。でも、そんなことを感じながら走っている人はいるのだろうか、と思いながらも(笑)。

エジプトのビバークは。

 エジプト入国しました。エジプトのカイロにあるシアグホテルがビバークの食事とか取り仕切ってやっていてね(ファラオラリーでもそうだった)。もうデーッかいアラブのテントがセッティングされてて、これでもか!というくらいの料理が出てきて。プレートも3倍くらいの大きさになって。生野菜から何から山のようにあって。生野菜は食べるな!と言われてるんだけど(生水で洗ってるからね)、思わず食べちゃったよ!(笑)あまりにもおいしそうで。野菜不足ってカンジでしたしね。スゴクおいしかった。スタッフのホスピタリティーも最高でね。
 今日はここ、ダッカラに2泊するんだけど、テントは(ニアメイ以外)初めて張りっぱなしになるんだけど、盗難とかも大丈夫そうですね。一般の人もあまり入ってこないしね。
 ビバークでイタリアの「イコモト」というバイク屋さんのルチアーノさんという友達に会ったんだけど、涙出そうなくらい向こうが喜んでくれて。パリ・ダカールを観戦しながらカイロに行くというツアーに参加してて。チュニジアラリーを一緒にやったバイク屋さん(今回で言うとブリタニィ・モトにあたる)で、感激の対面でした(久しぶりなのよ)。カイロで待っててくれると思うとウレシイわ!

(→レポートは第2弾へとまだまだ続きます。)


レポート第2弾です。

コンディションは。

 走りに関しては問題なしです。肩こりくらいで。でも、目がやっぱりちょっとくもるカンジですね。長距離だからね。今、三菱の友川さんのナビ・浅田さんが目薬をくれて、ジャージャーと流して、少し直ってきました。体は、転倒したけど別に何ともないですね…。
 あと、ブーツ。10カ所止めるところが、5カ所になったと報告しましたが、何と右足ブーツは1カ所(笑)になってしまったんですよ。で、ガムテープをキツキツに巻いてるんだけど、医療用のプロテクターがね(これがあるから私はヒザをやられてないのだ)ずり落ちてきちゃって(笑)。そんなことくらいですね。

幸繁くんが風邪ひいちゃった。心が痛いのです。

 メカの幸繁くんが、ものスゴイ風邪で、ちゃんと立てないような状況の中やってくれていて、とても申し訳ないと思っているところです。本末転倒になってしまい、池町くん、ホントゴメンナサイ。池町くんのマシンはそう問題なく、メンテはすぐ終わるんだけど、私のマシンはちょっといろいろあって時間がかかり、この前も朝までかかったりしてたからね。コマ切れにしか眠れないのが、もっと眠れなくなっちゃって…。で、寒いしね。食べる物も食べてないし。だから風邪をひいちゃってるんです。
 で、幸繁くんの面倒はというと…実はトヨタの金森さんたちが、エンジントラブルでリタイアしちゃったのですよ。その金森さんのところのエアメカ男女2人が、ずっと彼を見てくれてて。私は心がイタイのです。自分でメカを手配していれば…と。人のいい幸繁くんに甘えてしまって。今は神様に祈る気持ちでございます。ハイ。
 池町くんも、高速走行が続いて可哀相なんだけどさ、それでもこんなに上位の日本人選手はなかなか今までいなかったし、それをキープしてもらうためにはメカが絶対必要なのに…。ゴメーン…と。ガンバって、ゴメーン…というカンジでございます。今ホントに一番心を痛めているのはこのことなのです。

チームメイトはどうしているか。

 そうだ、谷口さんに会えたよ!帰ってきたらゲートのところにいて、抱きついてくれたの。「お帰んなさーい!」って。でもその後に会えるかと思ったんだけど、まだ会えてないのです。どこにいるんでしょう?(笑)でもすごく嬉しかった。
 本人はリタイアしたものの、元気そうでしたよ。この広いビバークでなかなか会えないのですが、明日はまた早く帰って来れそうなので、会ってお話を聞いてみたいと思います。
 斉藤くんはホント調子良くなっちゃって、最初記憶喪失だったなんて、信じられないよね。ウソみたい(笑)。走れば走るほど元気になっていくという不思議なヒト(笑)であります。
 あっ斉藤くんがちょうどここにいますのでちょっと彼に替わります。

●斉藤選手
 もしもし斉藤です。どうもこんにちは。今日はね、夜になりかけるところでねェ、大変でした。順位は上がったんだけど…。
(何人かのメッセージを伝えたところ、ハイハイハイと分かっていたみたいでした。)
 あと2〜3日で終わるんで、ガンバリます。どーもありがとーございます!

というわけで元気な斉藤くんでした。
 

ふと思うことは。

 今日ね、ステージが長いからいろんな人のことを思い出してね。丸富製紙の皆さんをはじめ、いろんな方々に応援して頂いている事を意識して走りましたね。いろんな人の顔が浮かんできてね。
 あとね、こういう砂漠にいるとさぁ、たき火とか、街の灯りとか、飛行場の灯りがあったりしてさ。灯りとか火とかって、いいよねー(つくづく)と。改めて、ね。家の灯とか人工的なものであっても、すごいホッとするというか…ね。
 どういうことが人間って楽しいのかなぁ…と考えてみると、そういう灯りや火があることだったりするのね。ガソリン給油のところでミントティーを地元の人にもらったのね。あったかいのを。ワァーおいしいーって飲んだり、ビバークでいつもあったかいコーヒーや紅茶、スープを飲めるのね。そういうあったかーいものとかもね、いいよねー(つくづく)。(笑)
 そういういつもは何気ないもので、いつもありがたいとは思いつつも(こういう状況だと)とにかく「ハァーッ」ってねぇ、心が溶けるみたいにスゴクうれしくなっちゃうのでした。

ジワジワと選手は減りますね。

 途中、アンドレアン・メイヤー(女性ライダー・BMW)がまた止まっていました。また電気系統のトラブルらしくてね。でも明るいんだワこれが。
「困っちゃったよー!でもあなたは早く行きなサーイ!」って(笑)。
 そんなカンジでした。今日は彼女みたいに止まってた人を15人くらい見たかな…。その中で何台復活したか…。しかしみんな夜になってしまって危ないところ(昼間でも危ないところがあったので)はホント大変だろうなぁと思いながらね。
 それでね、リタイアした人って、みんな割とサバサバしてるものですね(ウチのダンナもそうだったけど)。朝起きてね、朝食食べようとしてみんなのいるところへ行くと、私服になってる人がいるの。アレ?と思うと、その大抵の人がリタイアしてるの。ジワジワジワと人がいなくなっていくのであります。
 今日はまだよく分からないけど、バイクは100台ちょっとくらいになっちゃったんじゃないかなぁ…。ウーン。

実は祈りの毎日なのです。

 私のバイクについてる天使(グリグリ)についての話。何度か転倒したけどね、ちゃんと付いてるよ。片方の羽根はマーちゃん(雅康氏)にバイクの整備中に折られて、もう一方の羽根も振動で折れそうなんだけど、何とかくっついていて。毎朝、頭をなでてですね、もーあらゆる神様にお祈りをしております(笑)。助けてーとかいって(笑)。何とか楽しい1日になりますように、という「お祈り」をしてからスタートしてます。もうホント「神にも祈る気持ち」ってのはこのことね。「みんなが楽しく楽しく走れますように」という祈りなんですけどね。
 実はね、今日はよく乗り切ったなあと、自分でも感動しております。やっぱりね、スゴイ距離なのよ。日野の菅原さんとも話したんだけど、日本だってこんなにスゲェ距離をオフロードで走んねぇよなって(笑)。
 明日はまた朝早いんだ。5時半スタートだから。(距離は)短い日なんですけども、ホッとしないでガンバって。また、いい景色を見るために走ってきます。あ、砂はまだ拾えてません(砂を拾ってくる予定なのです)。
 じゃ、とにかく明日もガンバってきまーす。それじゃ。

●今日の成績(公式記録)
 SS/98位
 総合/91位

次の日記へ(1月21日〜22日)


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