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10月26日、朝日がムチャムチャまぶしい中、スタート地点の五日市会館へ戻ります。中間地点の第2関門で別れてほぼ5時間半の、朝6時半。会場内はイスに座って眠っている人や、途中経過のリザルトを見る人がまばらにいて、まったりとしています。さて、レイコは第3関門の58km地点を通過できるのでしょうか。別れた時間から考えて、まだまだ通過しないと分かっているのにリザルトを探してしまいます。やっぱり名前はありません。競技者が関門を通過し、一般者がその結果を知るまでのタイムラグは、約1時間。『もしかして、もう通過しているかも』『いや、あの足の状態ではリタイヤしているかも』考えてもしょうがないのですが、どうにも落ち着きません。むーん。 もんもんとしながらゴール地点をウロウロしていると、おおお、長田麻里ちゃん発見。もう、すっかり着替えています。なんと16時間9分31秒、つまり朝の5時過ぎにはゴールしたそう。は、速い。しかも、いきなし白ワインで乾杯しているし。す、凄い! しかもしかも「30代女子部門 6位入賞」です。やったー、おめでと〜。それにしてもまだまだ元気そうです。運動し足りないんじゃないの?(あくまで冗談)「そんなことないスよ。もーいいです。・・・でも泳ぎたいかな?」。ぎょえー、あくまでも冗談を装ったマジにしか聞こえません。さすがアイアンウーマン! はてさて、表彰式がすっかり終わり、白ワインもすっかり飲み干し、レイコのこともすっかり忘れそうになった9時半過ぎ、新しい第3関門通過者リストが張り出されました。待っている人たち皆が、一斉に壁に張り付きます。むむむ「あった!」思わず声が出ます。「967位 山村レイコ 19:25:46」ほぼ1時間前に58km地点、残り12.5km地点を通過しています。このペースならばなんとか24時間以内に帰ってこれるのでは。『すごい、やるなあ、あの足で、うー』こうなるとじっとしていられません。ちょっと途中まで行ってみよう。 すれ違う競技者の人に「お疲れさまです」「もう少しですよ」と声をかけながら、道を譲りながらコースを逆歩きます。多くの人がもうろうとしながらも「はーい」と答えてくれます。中には「あと何kmですか」と聞いてくる人もいます。あと2kmちょっとですよ。「よっしゃ」たちまち顔が元気になります。ところが逆走距離が進み、あと4kmとなった辺りで、人によって反応が大きく違ってきました。「よしっ」て人と「えー、まだそんなにあるのか」という人に分かれるのです。だからと言って、少な目に言うわけにはいきません。聞かれたときのみ、なるべく正確に伝えるようにします。 そうして、10時42分。菊地由花ちゃん、発見。おー、よかったよかった。どう?「腹減りですーぅぅ」。あらら、持参する食料が少なかったようです。しかもあまりの空腹に「草、食べちゃいました」って、オイ!! 「崖から3回も落ちちゃいました」ってオイオイ!!! うー、麻里ちゃんと違った意味で、この人もスゴイわ。ゴールではご飯が待ってるよ。「頑張りまーす」 ん? あの姿は。わーいたいた、丁度11時、多分残り5km地点辺りで、2人連れでニコニコ歩いているレイコ発見です。「アタシ達、靱帯仲間なの♪」一緒に歩いているのは、途中で知り合った鳥取から参加の前田ありささん。この方は2度目の挑戦で前回は第2関門でリタイア。今回はリベンジを誓っているのですが、同じように膝の靱帯を痛めたそうです。それゆえ、2人の歩く速度はぴったしカンカン(古いっ)。それにしても”らしい”と言いますか、”さすが”と言いますか。はっきり言って超過酷なはずなのに、痛みが全身を走っているだろうに、いつもと変わらないニコニコ度には脱帽です。でも、ありささんも同じようにニコニコしています。素晴らしい! 靱帯仲間だけでなく、ニコニコ仲間でもあるのね。 「夕陽がスッゴイ綺麗だったよー。今までのベスト3に入るほど」「3分×10回くらい寝たかな」「朝日を浴びるとみんな元気になっていくのよ」などなど途中経過を話しながら、2人は後ろから来る速い人に道を譲りながら一歩一歩進みます。それにしても平地は良いのですが、下り坂は本当に辛そうです。「こうやった方が、スゴイ楽」と、靱帯損傷歴の長いレイコが”秘技後ろ歩き”を始めました。ありささんも同様です。へー、どれどれ。試してみると確かに膝への負担が違います。後ろ向きの方が格段に楽チン。 そして、残り数百m、平地になりました。この様子だとタイムリミットの1時間前、12時にはゴールできます。あと少し。「よし、行こうか」と、2人はなんと小走りを始めました。大丈夫なのか? スゲイゾ! 2人並んでのランです。大した気力です。そして、手をつないでゴーール!! タイムは22時間59分18秒。23時間になる前、ギリギリに入るところがレイコらしい(最後まで諦めない&帳尻合わせ?)ところです。 帰り道、車の助手席で「コンビニに寄って・・・」と言いかけたまま爆睡モードに入ったレイコ。ピクリともしないで寝る様から、レースの過酷さが忍ばれます。と同時に、傍観者から見てもその達成感が伝わってきます。伊豆アドベンチャーレース、そしてこの日本山岳耐久レース。「人には無限の可能性がある」とはレイコの口癖ですが、それを目の当たりに見せてくれました。そして45歳のレイコは、やはり”底なしの人”でした。 (いすわりまりこ)
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