産経新聞 平成15年(2003年)10月9日 木曜日 12版 22頁
ゆったり暮らせば 第27回
〜やすらぎの”場”〜
開放感あふれる物件を探す
朝霧での暮らしは、日の出の一時間ほど前から繰り広げられる朝焼けで始まります。そして夕焼けまでの間に流れる時間は、ゆるく、濃く、すべてが自然と共にあります。ここを訪れる多くの人の心を解放してくれる「ふしぎなやすらぎ感」を、引っ越してすぐに私はカタチにしたくなりました。風が強く、冬はマイナス一五度にもなる厳しい所ですが、心身共に疲れた人には、むしろそれがプラスに向くようなのです。道場? 病院? 学校? 農場? 店? ただのお休み処?。
問題はいくつかありました。プライバシーを重んじる元夫は、個人宅を解放することには反対。そして私の愛犬は子供が大の苦手なので、見知らぬ人がどやどや来ることは考えられませんでした。「じゃあ、別の場所を探そう」。「協力は惜しまないよ」と言ってくれた元夫とともに、近くの気持ちいい場所を探し始めました。
さて物件探しはお手の物、すぐに広い土地がいくつか見つかりました。富士山の裾野がこれでもかと広がり、きらきらと輝く駿河湾に浮かぶのは伊豆半島の先端。三六〇度の牧草地では、馬牧場や野菜畑が夢でないどころか、広すぎでどうしましょー、です。「気持ちいいわ、ここがいい!」と思ったら、なんと八十億円とか? 私ってお目が高い・・・。けれど気に入った所のほとんどが、値段、規制、売却不可能など、いずれも何かの理由で手に入れることが難しいものばかりでした。土地値が高いならば、NPO法人にして共同でトラスト形式にしたらどうだろう。一口千円の一坪運動で、クラブ形式なんてあるかも。行政も巻き込んだほうが大きなことができるかな。構想はどんどん膨らんでいきます。
とにかく二人で考えていても突破口が見えないので、町おこしの達人たちを集めてプロジェクトを起こすことになりました。バリアフリー&ユニバーサルデザイン、道の駅づくり、エコ設備に長けた人。市行政サイドや区長も務めた地元の人。そのすべてが親しい友人ということに自分で感動しつつ、視察という名の各所施設訪問が繰り返され、意見が交わされました。
とにかくあふれる自然に触れながら、汗を流して遊ぶもよし、ぼ〜っと散歩するのもよし、農業するもよし。動物がたくさんいて、身体にいいレストランや宿やキャンプ場があって、世界中から老若男女がやって来る憩いの基地。有機コンビニも温泉もいいなあ。考えているだけでワクワクしてしまいます。
ところがすごい勢いでコトが動き始めた二〇〇〇年、「さあ、さらに一歩進んで具体化しよう」と思い始めたその時でした。どっくわぁああ〜〜〜ん!! 肝心な我が家に大異変が起きてしまったのです。
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友人のまな娘、小林凪子ちゃんとともに牧場で子牛と戯れる。こんな笑顔に出合うと、ますます”やすらぎ処”を作りたくなるという=静岡県富士宮市
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