vol.45 2004年 1月 9日  『ゆったり暮らせば』 第17回

産経新聞 平成15年(2003年)7月24日 木曜日 12版 14頁
ゆったり暮らせば 第17回
〜コパさんの助言〜
真ん中の高い位置にお風呂場


 わが家にはいろんなお客さまがやってきます。三年目に仕事でいらっしゃったドクター・コパさんは、実にいいタイミングの訪問でした。これから作る露天風呂の場所を悩んでいたからです。「トレーラーハウスの南側に作ろうかな」「夫婦仲が悪くなるから、それは止めた方がいい」「じゃあ、どこに?」「敷地の真ん中にう〜んと高く作ってみたら」「敷地の? 真ん中ですかあー?」
 一年ほどテレビ番組でご一緒したコパさんの風水は、どれもうなずくものばかりでしたが、このときはかなり驚きました。屋根もそうですが、敷地の真ん中に高いものがあるのはいいとか。うちの土地で真ん中というと・・・ただの空き地。というわけで、そこでできる限り高い位置にお風呂場を作ることにしました。
「ここはすごいところだね。普通は足りないことがあるから、花や絵画や置物など違うもので補うのに、完璧なんじゃないか。 富士山から日が登り(東に赤)、牧草地の先には駿河湾(南に緑と青)、そして毛無山に陽が沈み(西に黄)、背後にはこんもりの山(北に風を防ぐ高台)。好きなことやりなさい!」。そういえば以前住んでいた人たちは、みんな幸せ家族だったとか。この言葉は何よりの励ましとなりました。
 最初の出番は、大工仕事に目覚めた元夫です。古電柱でできる限り床をあげ、さらに浴槽も一段高くあげました。廃材でせっせと組み上げ、あっという間に脱衣所と浴室が完成。そこで私の出番。漏水防止のビニールと金網を張った床や壁に、モルタルを盛り、タイルを貼るのです。昔から左官作業は憧れだったので、嬉しくてなりません。子供の頃に新築家屋の建築現場に忍び込んでは職人さんの動きに見惚れていました。人生に一度はやってみたかったタイル貼りが、自宅の失敗してもいいような(?)アバウトなお風呂場であったことに感謝しつつ、セメントをこね始めました。
 このモルタルをちゃっちゃと壁に盛っていくのですが、レンタルの電動機械を使ったものの、風呂場が広すぎて一日では終わりません。お金がもったいないし、面白そうなので、以後すべて手ゴネとなりました。最初は決まらなかった水加減も、後半は湿気の計算も出来るようになりました。硬めのソフトクリームのごとく滑らかになると、モルタルが叫びます。「今よ」。とにかく垂直の壁は難しいのですが、後にそこに貼られるであろうタイルのことを考えると、妥協は許されません。結局、修正に修正が加わり、「床が抜けるのでは?」というくらい盛ってしまいました。この作業中、金網ごと壁が倒れてくる夢を幾度か見て、冷や汗たらり。
 浴槽回りも水が流れるように傾斜を考えるため、頭が混乱しそうになりました。水平器を片手に、水の流れを想像しまくります。「左に傾斜しつつ、手前を落として・・・」。こうしてなんとか下地が出来たところで、冬の到来。タイル貼りは寒さの緩む半年後までお預けとなりました。「早くやりたいよー! 早く入りたいよー!」

人気風水師、ドクター・コパさんお墨付きの山村家自慢の浴室=静岡県富士宮市 

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