vol.44 2003年 12月 27日  『ゆったり暮らせば』 第16回

産経新聞 平成15年(2003年)7月17日 木曜日 12版 20頁
ゆったり暮らせば 第16回
〜廃材でモノづくり〜
”大物”は広々とした富士見湯


 敷地のあちこちに、喜々として作った元夫の作品が、恐ろしい勢いで増えていきました。ログ材を利用したベンチ、テーブル、トーテムポール、外灯。その合間を縫って、倉庫で使うパレットが回廊のように並びます。バンカーサイロは古電柱で屋根を付けて駐車場となり、庭にはパレットを組んだトライアル(バイクで決められた所を正確に走る競技)のためのセクションもできました 。

 この”モノづくり病”に拍車をかけたのは、「自然暮らしの会」代表でログハウスやカヌーを作って楽しんでいるタレントの清水國明さんでした。昔からバイク仲間でもあった清水さんがここ朝霧にやって来たのは、ちょうど引っ越した平成七(一九九五)年の秋。「お祝いに」と頂いたのは、その場で自ら割った薪の山でした。(もったいなくて使えない!)その時チェンソーの扱い方を指南していただいたのですが、アクセルワークがバイクとそっくり。横に置いたログをスライスする方法とノッチ(組み上げるための溝)の切り方を教えてもらってからは、ぐっと作品が増えたのでした。余談ですが清水さん、「ここマイナス十五度になるの? ふーん、この冬が乗り越えられるかどうかだなあ」と真剣につぶやいていました。『意地でも逃げないぞ』と思ったのは言うまでもありません。

 さて並んだ木の作品は、すべて廃材から生まれた物でした。「ログの展示品捨てる」と聞いては取りに行き、「新築の余材あげる」と聞いてはせっせと回収したおかげです。リサイクルは趣味ですが、ここまで徹底できたのは、たぶん、ただ庭が広かったからでしょう。東京ではチェンソーの置き場にも困ったでしょうし、音にも木屑にも気を使ったはずです。

 そんな恵まれた環境で作った作品の中でも、一番の自慢かつ大物は、なんと言っても庭に作ったお風呂小屋です。トレーラーハウスで洗面器三杯入浴を四年もやれば、やはり湯船でのくつろぎが恋しくなります。二年ほどの間にたくさんの廃材が集まったので、いよいよ着工。でも「浸かりたい!」という夢が膨らみすぎたのか、完成してみれば、脱衣所と合わせて四メートル四方もの大きさに・・・でかすぎる! 冬場は暖房費節減のために、昼間に入るしかないほどの広さです。設計図はなく、ひらめくままにチェーンソーやトンカチを動かしたせいでしょう。けれど我が家で一番の乾燥室、しかも富士山がどか〜んと見える「富士見湯」なので、ガレージのストーブと並んで、やはり人気のスペースとなりました。はっきり言って、トレーラーの寝床よりも広く、しばらくはここに住もうと真剣に悩んだくらい快適な空間です。
 基礎は古電柱とログ丸太、床はパレット、外壁材はたまたま家を建てたばかりの友人からいただいた残り材のレッドシダー、浴槽は展示品処理品、タイルも処分品、ドアは酪農家からいただいたものと、見事なまでのリユース。友達も手伝ってくれたこの風呂制作ですが、実は私もちょっとのつもりがどっぷり手を突っ込んでしまい、大騒動ぎとなりました。でも、これがもう〜楽しくて!

山村家一番人気のお風呂小屋では、”富士眺望の湯”が楽しめる=静岡県富士宮市 

次へ(2004年1月9日)
【Top Page】

Copyright 2001 Fairy Tale, Inc. All rights reserved.