vol.75 2005年 1月18日  『ゆったり暮らせば』 第47回

産経新聞 平成16年(2004年)3月4日 木曜日 12版 18頁
ゆったり暮らせば 第47回
〜初女さん朝霧に〜
あたたかさに涙が止まらない・・・


 「わおーっ! ほんとうなのかしら? 夢みたい!!」

 あこがれの佐藤初女さんが、わが朝霧に来て、講演会とおにぎりづくりの実演をしてくださることになりました。話が持ち上がった昨年二月の時点でスケジュールを確認していただいたら、空いていたのは十月三日前後だけ。実は初女さんのお誕生日だったからなのだけれど、いいのかしらん?

 いつも初女さんとともに動いている五人のスタッフも来てくださることになりました。すると、段々欲が出てきました。「どうせ呼ぶなら多くの人に初女さんのすてな生き方を感じてもらいたいな」。初女さんのお料理は、ほんの一口いただいただけで、「素材の”いのち”が二度生きている」ことが分かります。おにぎりだけでなく、お茶碗につがれたお米の一粒一粒も、気持ちよさそうに呼吸しています。茹(う)で方、切り方、味付けの仕方、盛りつけ方にちょっとした心遣いがあるだけでこんなにおいしいものになるなんて・・・。素材の安全さばかりを追求していた感のある私には、少なからずショックがありました。

 初女さんの数ある著書の中には、こんな言葉が書かれてあります。「本当の奉仕とは、時間が余ったからとか、必要ないからといって差し出すのではなく、最も大切なことを捧げること」。私はそんな心を持ったたくさんの人で催しができたらなあと夢を見ました。そして直感で電話をしたのが、ここに来てから町おこし関係の行事で何かとお世話になっているNPO法人「まちづくりトップランナーふじのみや本舗」(長いよーっ)の面々。かの富士宮やきそばブームの仕掛け人たちですが、中枢の女性Wさんは最初「初女さんてだあれ?」だったのに、話が進むに連れ、私以上にのめり込んでボランティアスタッフを集め、ミーティングを繰り返してくれました。通勤や家事の合間に、何百というすべての知人に自筆のお知らせを書いたというのですから、まさに「いのちがけ」です。そう、みんなで意見を出し合い緊張感と期待感を高めていったことは、私にとっても貴重な経験でした。

 結果、「ガイアシンフォニー」の映画上映と講演会とおにぎりづくりは町の市民ホールに二百人もが集まり、大盛況。宿泊と手作りの誕生日会は朝霧のわが家で行ないましたが、私がここでやりたいことを知っている初女さんが「きっとうまくいきますよ」とささやきながら、手をぎゅーっと握ってくれました。ダメだ、涙が止まらない。気がつくと町おこしのスタッフもみんなも泣きっぱなし。そのあたたかさ、かもしだす雰囲気・・・。なんでだか幸福の涙が止まらなかった初女さんご一行様との数日間は、人生において最も素晴らしい時間だったに違いありません。

初女さんの言葉に涙が止まらない山村さん=平成15年10月3日、静岡県富士宮市の自宅を改造した多目的空間「フェアリーカフェ」

 
【Top Page】

Copyright 2001 Fairy Tale, Inc. All rights reserved.