産経新聞 平成16年(2004年)2月19日 木曜日 14版 20頁
ゆったり暮らせば 第45回
〜食事作り〜
参加することが何よりの栄養
最近、料理が楽しくてたまりません。野菜やお米づくりを始めてから、今まで以上に「食」への感心が高まったから・・・と言いたいところですが、実は意外なことから再確認してしまいました。
ここには、現在二人のスタッフがいます。いずれも女性でお料理の腕は抜群。そして「お料理させてーっ」と住み込みのMちゃんはいつも大張り切りです。「レイコさんは外で思い切り仕事してくださいね。そしてここ朝霧では、心置きなく机に向かってください。食事の支度は全て任せて!」。というわけで、オーガニック素材で作られたシンプルメニューが、毎回テーブルに並べられました。
体を壊した関係で、十年前から食材はオーガニック、数年前からベジタリアン(お魚は食べるので、正式名称はペスコ・ベジタリアン)になった私なので、自然素材を生かしたものになりましたが、これがおいしいのなんのって。ちょうど自転車やカヌーなどでアウトドアを駆け巡るアドベンチャーレースを始めたときでもあったので、練習する時間を確保するためにも、食事作りは「しなくていいコト」になったのでした。朝晩の田んぼ作業もパス。昨年、アイガモによる稲作をお休みしてただの不耕起にしたのも、実は「アイガモだと動物好きのレイコさんは田んぼに通わずにはいられなくて練習できないだろう」というスタッフの優しさからでした。
そう、時間をいただいたので、仕事もレースの練習もバリバリやりました。おかげで大きな大会にも出場&完走し、充実した時間を過ごしました。でも、ある日、もうどうにも我慢できないほどイライラしている自分に気がつきました。何が? と探ると、どうやらやりたくて仕方ないのです。食事を作りたくてたまらない! 田んぼに出てカモたちと戯れながら作業がしたくてたまらない! よかれと思って行動していたことが、すべて反対でした。人に任せることも大きな学びですが、どんなに忙しくても、やることでパワーが出ることがあります。
食事の準備をしながら私は、ニンジンやジャガイモや豆腐の中に、命の循環や今の地球の状況、そして自分の夢を見ていました。時間をかけて造り上げたものを、楽しい語らいとともにありがたくいただくことは、なによりの栄養だったのです。久しぶりに台所に立ったときは、涙が出そうにうれしくて、ひたすら感謝感謝。
そして一昨日、休耕田に網を張り、十六羽のアイガモを放しました。カモたちが動くことによって耕してもらうのですが、いよいよ、田植えからアイガモ農法の復活です。今年はどんなに忙しくても作業やるぞーっ、と気持ちも新た。でも、もしかしてこれって、もっとやる気を出させようというスタッフの陰謀だったのかしらん?
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みんなでジャガイモ掘り。この笑いと満足感が次なるパワーを生み出して・・・(右端の山村さん)=昨年8月、静岡県富士宮市の一反ほど借りているレイコ畑で援農仲間と
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