vol.16 2002年 1月 29日  手作り山村興業

つくりものは、一生の作業かもしれません。こうして偉そうなことを書いていますが、この朝霧の家をトンテンカンしてくれたのは、山村さんと友人たちです。タイル貼りや庭の清掃や畑はやりましたが、いつも家にいて切ったり貼ったりしていたのは、彼らでした。これからいろいろなトンテンカンをしていくつもりですが、それはまず自分でが基本。独り立ちはたいへんですが、面白いですよね。そして独り立ちしても、やっぱりみんなでやることに意味があると私は思っています。
最後に出てくるスノコエイド、けっこう行けるかなと思っていたのですが、床板を100枚ほど買い込んだところで大型台風が来て、牛舎の屋根が落ちました。やらなくてよかった〜っ。ちなみにこのエイドに参加してくれる予定だったのは、マイク真木さんとその家族及び友人たちでした。今でもコンサートホールが出来たら、マイクさんには歌を、蔵人くんには映画を上映して頂こうと思っています(勝手に決めてるかも)。千葉で「波乗米(はじょうまい)」というお米を作っているマイクさん、かつては近くの富士山麓でモトクロス場をやっていたし、ハワイに住んだりといつも自由そのもの。羨ましいというよりも、なんだかいつも同じ風の中を生きているような気が、これまた勝手にしています(ほんとうに図々しくて済みません!)。

エッセイスター第15弾  「URC」10号  1998年
「山村レイコの自然にヤッホー♪」

 昔から手作りが大好きだった。図工と家庭科と国語(作文)、そして体育(体力作り)だけは得意だった記憶がある。特に工作と絵画は、夜なべをするほど熱中していた。マンガ家を目指し、ストーリー漫画の世界にどっぷり浸かっていたのも小学生の頃だった。
 大人になると何故かその対象物を見失い、制作活動はぷっつり止まっていた。が、ここ朝霧高原に住居を移してからというもの、今までの欲求不満を解消するかのように、一気にモノを作り始めたのだった。隣まで一キロ、買い物エリアまで十五キロも離れており、自分たちで作らないと生活できないこともあるけれど、廃屋の改装から始まって、廃材利用の整備用ガレージや半露天風呂、自然石や板を利用した庭先のトライアルセクション、野菜畑と停まることなく身体を動かしまくっている。 一番喜んだのは夫だ。工業デザイナー出身でラリー車両の改造がお得意の彼の能力は、百パーセント生かされている。熔接や鉄パイプの組み方など、いろんなことやっててよかったと毎日ニコニコだ。重機でのコースづくりも、今や日課となった。 土に触れ、初めて『食』の重要さに気づいた私の方は、胡瓜やナスや大根などの食べられるモノの栽培に夢中だ。農薬も肥料も使わない自然農なので、虫たちの食料を育てているような気もするが、自然の摂理やパワーに教わることは多く、楽しくて仕方ない。(本業の方には怒られるかもしれないが)農業、林業、土建、鉄工、大工、左官、料理、車両(バイク&四輪)と、我が家は「今日は何部?」が合言葉となっている。
 因に今日は左官部。友人たちが風呂場に集合し、貼り残りのタイルと格闘してくれている。廃材集めから考えると三年越しの露店風呂作り。完成の日には、涙が出てくると思う。そしてこの秋は、いよいよ敷地内にある牛舎を利用してのホール作りに着工するため、再び大工部が活躍する。床が腐っている約六十坪の廃牛舎の二階に、なんとかして板を張りたいのだ。友人知人、あるいは町内会の人が集まってコンサートを開いたり、映画を上映したらなんて楽しいだろう。ただしお金はかけたくない。たとえあったとしても(ないが)、そのままお金を積んで業者にやってもらうのでは意味がない。その道の真理が隠されている困難な手作業こそ学びがある、と思う。とはいえ材木代をどうするか。悩んだ末思いついたのは、一帖ずつのスノコを作って、その材料代五千円を友人が出すスノコエイド。朝霧に別荘だ。ただし一帖の。そこで寝袋にくるまって寝てもいいし、何をしてもいい。「私、朝霧にスノコを持ってるの」なんていいよね。
 それにしてもここ最近、来る友達は何故かみんな音楽ファンばかり。ギターにトロンボーンにリコーダー。ドラムにバンジョー、バグパイプ、そして正真正銘の歌手もやって来た。夜の演奏会もどきも、だんだん本格的になってきた。いつかは地元の酪農祭りでデビューするのが、一応の目標である。そのためにも自分たちの練習場を自分たちで作る。これって、もの凄く贅沢なことかもしれない。
 最初は何も求めてはいなかった。ただ自分たちの快適な空間を築き、好きなものを作っていた。でもしばらくすると、自分たちの、では何故か物足りなくなってきた。この空間を仲間と共有するのが楽しいし、みんなで作って使ったら楽しい。そう思うようになってきた。土地もモノもこの身体も、所詮借り物だ。有意義にしっかりたっぷりと命をまっとうさせてやることが大切だと思い始めている。う〜ん、歳でしょうかね?
 

廃材でつくった野外風呂。一等地に立っている。
モルタルとタイル貼りが私の担当。知恵と体力を使いまくった。




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