vol.15 2002年 1月 23日  「自立のための道具の会」

地球サイズのリサイクル「自立のための道具の会」TFSRを取材したのは、今から4年前、1998年のことでした。愛知県東加茂郡旭町の「あさひ製材協同組合」の鈴木禎一さんを未来派として取材させていただいたのですが、道具の会の作業本部として会社の場所を提供なさっていて、そこにある幾つかのコンテナに並べられた道具を見たときには、本当に感動してしまいました。役目半ばで終わろうとしていた工具たちが、今か今かと出番を待っているのです。忘れ去られて寂しそうだった道具が、地元の小学生や近隣のボランティアの手によって磨かれると、この世で一番幸せな道具に変身します。とにかくみんな、それはそれは楽しそうに磨いていました。再生することで道具のなんたるかを学んでいる人もいます。遠くからもやって来ます。船積みのコンテナも手作りで、スリランカなどのアジアに送るだけではなくて、現地に行って指導もするなど、活動はどんどん広がって行きました。役に立つために生まれてきた道具たちを見つめることは、自分たちの人生を見つめることにも通じるのでしょう。真剣であること、楽しむこと、みんなでやること、誰かが喜ぶこと・・・いい波動をいただき、とても感動した時間と出逢いでした。
取材後、すぐに会員になってしまった私ですが、この原稿は「会の会報誌に載せたいのですが」と頼まれて書いたものです。オンエアした「未来派宣言」の番組は、同じ年に「第5回NHK東海いぶき賞」というのを受賞し、とにかく思い出深い取材でした。

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エッセイスター第14弾 「TFSR JAPANニュースレター」No.8  1999年2月

 道具とのつきあいは、生まれてすぐに始まります。育ててもらう間に、回りの大人たちが多くのモノを与えてくれますが、扱い方や接する気持ちは、その頃に決まってしまうような気がします。私がバイクの修理道具より先に深くつきあっていた道具は、漫画を描くためのものでした。カラスグチや各種ペンを使って、小学校低学年からストーリー漫画を描き始めたのですが、これは学校の勉強より熱中しました。工夫次第でどんな線も描けることや、手入れを怠ったりブランクが長いと、錆びるだけでなく、命そのものが失われていく事も知りました。道具とつきあう事で、人とのつきあい方も学んだような気がします。
 使われなくなった道具たちを磨き、最も生かせるかたちで諸外国に送り続けているグループ『TFSR』の事を知ったのは、昨年末です。どんな道具が集まるの?どんな風に磨くの?送る費用はどうするの?と興味津々。ちなみに倉庫を埋め尽くす我が家のツールボックスを開けてみると、要らないものが見つかりません。「プロのライダーだからね。ふっふ」と自慢げな夫。やっと見つけた山の潰れた1本のドライバーを持って、旭町の鈴木禎一さんの作業場へ伺いました。

1999年。旭町のワークショップを取材。こんな凄い鋸(のこ)初めてだ〜!こんな私の顔も初めてだ〜!!

 コンテナに整理され、山と積まれた道具たちに、まず驚きました。私が持参したようなどうしようもない道具は稀で、そのほとんどがキチンと大切に使われていた物たちです。プロの大工さんが使っていたと思われる手作りの道具は、特にピカピカで、触ると感動のあまり鳥肌が立ちました。普通の家庭で普通に使われていたものでさえ、愛が感じられます。丁度届いた宅配物の梱包を解く瞬間に立ち会わさせて戴いたのですが、胸がきゅ〜んとなってしまいました。既に磨かれてある愛用の道具が、丁寧に紙や布にくるまれており、その横には「送るだけで御免なさい」とメッセージ。どの箱も使用状況や応援の言葉が、さりげなく書かれてありました。不用品をタダで処分できて良かったなんてのは皆無です。「本当はこの瞬間を、会員の皆に見てもらいたいんだよね」と鈴木さん。
 私は引力説というのを信じているのですが、まさに道具の会の精神(真っ直ぐで遊び心が豊富)が、そういう人を引き寄せるのだと思います。たった2日間の取材でしたが、会の素晴らしさを充分見ることが出来たと思っています。厳冬の中、老若男女が喜々として道具を磨いているワークショップの様子は、とても印象的でした。それぞれが楽しく自発的に動いていて、笑顔がいっぱいで、炊き出しも美味しくて、大きな丸太もノコギリで切らさせて頂いたし、大満足。お金だけではあがなえない何かを知っている人達の、タフさと気持ち良さに、すっかり酔ってしまいました。

 取材媒体はNHK名古屋製作の『未来派宣言』というテレビ番組です。未来を見つめ、日本だけに留まらず、世界や宇宙まで広がるような素晴らしいことをやっている人達を紹介するのですが、今までも儲けや名声に関係なく、とにかく楽しくいいことをやっている人ばかりにお会いすることが出来ました。私欲がない、好きだからやっている、少しでも未来をよくしたい、というのが共通していましたが、とかく結果ばかりが問われる日本で、これは実は大変なこと。家族や仲間の理解、妥協のない意志・・・。追求しながら、回りも一緒に成長していかなければなりません。
 いろいろと壁はあると思いますが、この先、活動資金にもっとゆとりが出来て、『道具の会』の夢がどんどん膨らんでいく事を心より願っています。

P.S.取材後会員になったのですが、誰か気づいてくれました? 

  by 公平な立場を越えて取材してしまった山村レイコ

2002年1月、ビデオのナレーション取りにてメンバーと会う。偶然にも撮影当日と同じフリースだった私!
左より道具箱を作ってくれた道具技術指導の加藤充之さん、元ラリーストでもある事務局長の川島康治さん、今回のビデオの日本語版&英語版の台本を作成した企画部長の吉野まり子さん(この時のことは独り言で・・・・)。



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